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1997年10月29日
港区高輪2-6-2
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品川の駅から高輪プリンスホテルの横を抜けて歩くこと十数分、昔ながらの造りの銭湯が現れる。数少ない港区の銭湯の一つ、高輪浴場だ。番台では気難しそうなおじさんがふんぞり返って本を読んでいる。お金を払うときもなんとなく無愛想。まあ、気にせずいこう。
ここの銭湯を一言であらわせば「シンプル」というところか。脱衣場もロッカーと昔ながらの体重計くらいしかめぼしいものはない。体重計はキログラムと貫の両方の表示がついている。
シンプルなのは浴室も同様だ。全部で二十一個あるカランのうち、シャワーが付いているのは男女の仕切り側の壁に並んだ六つのみ。混んでいるときはシャワーが使えなくて困る人はいないのか、それともそんなに混むことはないのだろうか。いや、もしかしたらシャワーがなくても困らない人が多いのかな‥‥。
さらにさらに、シンプルに見える要因として大きいのは「ペンキ絵がないこと」である。ただ単にペンキ絵がないだけならそう感じないのだろうが、ここの場合は、浴室の造りとして明らかにペンキ絵が描かれるようになっているはずなのに、それがないのである。おそらく昔は絵が描かれていたのであろうが、いつからかそれもやめてしまったのであろう。
湯舟は二つに仕切られていて、片方は泡風呂、もう一方は鉱石が入った長寿泉という湯だ。最近は寒くなって来たので広い湯舟でのんびり温まるのは本当に気持ちいい。これこそ内風呂では味わえない銭湯のよさだろう。
脱衣場で服を着ていると、さっきの番台のおやじさんが客のおじいさんに文句を言っていた。ややこしいことになるのかなと見守っていたら、二人ともなんだか楽しそうに文句を言い合っている。無愛想な番台のおじさんにもなんだか親近感がわいてきた。
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