やすの銭湯日記

2000年12月30日
廿世紀浴場

台東区日本堤1-34-1

さて、あと二日で二十世紀も終わりというこの時期になって、銭湯めぐりも二百湯を迎えることとなった。実は今年中に是非訪れておきたい銭湯があったので、記念すべき二百湯目をこの銭湯で飾ることにした。

その銭湯とは「廿世紀浴場」である。なぜ今年中に訪れておきたかったかについては説明するまでもないだろう。この銭湯は名前もさることながら、銭湯とは思えない洋風のモダンな外観でも有名なところである。「ゆ」ののれんが掛かっていなければ銭湯だとは思えないほど洋風のおしゃれな造りだ。

同居人と一緒に訪れたので、番台で二人分払う旨伝えると、「八十円」という返事が来る。え、そんなに安いのか、と思うより前に八百円の間違いであることには気づいたけれど、きっと入浴料金が数十円だった頃から番台に座っていたのだろうなあと考えてしまった。このレトロな建物を見ると、本当にタイムスリップしてしまったような気分になるのである。

浴室の方も期待を裏切らない。最初に気づいたのはカランの形である。七割程度は他の銭湯でもよく見るごく普通のカランなのだが、その中に三割程度、ちょっと変わった形のものがある。上からまっすぐ垂直に押すようになっていて、取っ手には「湯」とか「水」とか漢字で書いてある。古いタイプのものに違いない。壊れているものもあったので、やがて全部新しいタイプのものに置き換わってしまうのだろう。古いタイプが見られたのは運がよかったかもしれない。

背景画は富士山のペンキ絵。湯舟は二つに分かれていて片方が深くて熱い。最初に熱い方に入ったら「そっちは熱いよ」と常連らしきおじさんに言われた。「熱いのが好きなんです」と言ったら、照れ隠しのように笑って湯舟に入って来て、すぐに上がっていってしまった。あまりチャンスはないのだが、知らない人との会話ができるのも銭湯の楽しみの一つである。

全体的に静かな感じで、落ち着いた雰囲気を漂わせるすばらしい銭湯であった。まさに二百湯目の記念にふさわしいところだった。来年からもいい銭湯をたくさんめぐりることができればいいなと思う。

では、みなさまよいお年をお迎えください。



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