やすの銭湯日記

2004年3月15日
万才湯

港区芝5-23-16

都営三田線の三田駅を下車、慶応仲通りを慶応義塾大学方面に歩いて行き、ちょっと右に入ったところに見える「ゆ」の看板。これが万才湯の目印である。目印とは言っても、まわりは飲食店がずらりと並ぶ繁華街。よほど気をつけてみていないと見逃しそうである。

奥まったところにある入口へ向かうと、フロントにご主人が座っているのが見える。千円札を一枚渡してお釣りの六百円を受け取り、手前の男湯に入る。ビル銭湯だからさすがに「広い脱衣場」というわけにはいかず、天井も低いし脱衣場自体が狭い。これも都会の銭湯の宿命か。

脱衣場を裸のまま右往左往している老人がいる。どうやらロッカーの鍵をなくしてしまったらしい。まわりにいるお客さんがすかさず声をかけ、鍵を探し始める。浴室にいる知り合いにも声をかけて協力を求めていた。鍵は老人の石鹸箱の中から無事見つかった。常連さん達の連係プレーのすばらしいところを見させてもらった。

さて、一件落着したところで風呂に入ろう。浴室の中央、島カランには鏡もシャワーもない、向かい合わせで座るとお見合いしてしまうタイプ。壁際のカランには鏡もシャワーも完備である。まずはいつものように髪を洗うのだが、シャワーの出がよくて非常に心地よい。

湯舟は二つに仕切られており、深さを違えている。浅い方は比較的ぬるめ、深い方は熱め。事前に仕入れた情報では、深い方の湯舟はけっこう熱いと聞いていた。実際、手を入れてみると確かに熱い感じがする。まずは浅い方で体をならしておいて、一休みしてから深い方に挑戦だ。

‥‥と思っていたのだが、一休みしているうちに、深い方に入る人が次々と水を入れている。やはり常連さんにとってもちょっと熱いのだろうか。空いた頃を見計らって私も挑戦したのだが、うなるほどの熱い体験は残念ながらできなかった。

浴室に入ったときには、この銭湯は背景画もなくて寂しいなあと思っていたのだが、湯舟に浸かろうとしてふと正面を見ると、入口上方に見事なレインボーブリッジのペンキ絵を発見。これはいい。まさに港区の銭湯にふさわしい題材だ。

設備自体は凝ったものがないのだが、お客さんも含めた全体の雰囲気が非常にいい銭湯だった。周辺のお店もなかなか魅力的だし、街になじんでいる感じがして余計魅力的である。

この銭湯をもって港区に現存する銭湯は制覇したことになった。入った数は十三軒、現存するのは九軒。ずいぶん減ってしまったなあ。



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