やすの銭湯日記

2001年10月8日
今戸温泉

台東区今戸2-8-3

銭湯めぐりの仲間から「浅草の今戸温泉が廃業する」という話を聞いた。今どき銭湯の廃業は珍しい話ではないのだが、友人の話を聞いていると、今回の廃業はかなりショックな出来事だという。どうやら、なくなってしまうにはかなりもったいないくらいすばらしい銭湯らしいのだ。なんとか廃業一週間前に時間が取れたので、浅草まで訪ねることにした。

運動不足解消のために、総武線浅草橋駅から歩くことにする。江戸通を北上し、浅草寺の横を通って、ちょっと暗くなってきた頃に今戸温泉に到着。何だかちょっと派手な照明は、蛍光灯に色セロファンのようなものを巻いてカラーにしたもののようだ。まるで東南アジアのお店のような飾り付け。

下駄箱に靴を入れた時点でかなり混んでいる予感がした。下足札がほとんどないのだ。中に入るといきなりロビーがあり、男女の戸が並んでいる。中は番台になっていて、入浴料四百円を払う。サウナもついていたはずだと思い訊いてみると、追加料金は不要だそうだ。これはうれしい。

予想通り、最近の銭湯ではあまり見ないほど混んでいて、脱衣場のロッカーもかなり埋まっていた。下段のロッカーに脱いだ服を入れて浴室へ。しかし、カランもあまり空いていない。

偶然空いたところを幸運にも確保することができ、とりあえず髪を洗う。最初にサウナに行こうと思ったのだが、こちらも混んでいてすぐには入れないようだったのだ。人が出てきたのを見てサウナ室に入ると、六人座れるところの一つが空いていた。人の出入りが激しい割には中の温度は高めで、かなり満足度の高いサウナだ。しかし、狭い中に立ったまま入っている人もいるくらい混んでいるのは東京では珍しい光景ではないか。やはり無料が効いているのだろう。

サウナから出ると人はけっこう減っていて浴室も落ち着いたムード。体を洗ったら今度は露天風呂である。脱衣場をまわって庭に出て、橋を渡った先の東屋の下にある湯舟に浸かる。岩風呂のムード満点のこの湯舟、友人が廃業を惜しんだのもうなずける。回りの池には鯉もいるし、本当にすべてがそろっている感じがする。

露天風呂の出入口は脱衣場だけかと思っていたら、実は湯舟の後ろにドアがあることに気づく。そこから浴室内の湯舟に戻り、十分温まったらあがることにする。

脱衣場で格子天井の鳳凰の絵を見ていたら、番台の女性から声をかけられた。廃業を惜しんで遠くから来る人も多いようで、番台の人も本当に残念そうだった。これだけすばらしい銭湯でも廃業しなければならないなんて、これからの銭湯業界は本当に大変なのだなあと実感した。



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