やすの銭湯日記

2002年1月2日
日の出湯

港区白金3-16-3

年が開けて二〇〇二年、今年最初の銭湯は一月二日の朝湯に入りに港区白金の「日の出湯」を訪れることにした。

地下鉄南北線が開通したおかげで交通の便は少しよくなったが、それでも最寄りの白金高輪駅からはちょっと歩く。このあたりは、北里大学病院をランドマークとして一般の住宅が広がっている。煙突を目印にして細い道を入って行くと、破風造の屋根が見えてきた。しめ飾りはこの屋根に実によく似合う。さて、冷えた体を温めることにしよう。

入口の下駄箱、番台、どれをとっても東京の銭湯の基本的な形である。この懐かしい感じは正月一番最初に入る風呂にふさわしいと思う。街の雰囲気にしてもテレビ番組にしても、以前ほど正月らしさが感じられなくなってきているここ数年、昔ながらの銭湯で正月二日の朝湯に使っている時間は、正月気分を味わうのに非常に大切な時間になっている。脱衣場におかれたテレビで箱根駅伝の中継が放映されているのも正月っぽくていい。

今回ここを訪れたのは、年末に訪れた銭湯ど同様「廃業の情報」を入手したからである。入口と脱衣場には一月七日で終了とある。おそらく今回が最初で最後の入浴になるであろう。心して入らねば。

浴室の中央には島カランが一つ。両側の壁にはシャワーつきカランが並ぶ。その一つを陣取って髪と体を洗いながら湯舟の背景画に目をやると、湖の見事なペンキ絵なのだが、痛んでいるのが目に付く。剥がれかけていたりひびが入っていたりしているのだ。このペンキ絵もあと七日でその役割を終えるのだなと思うと、寂しい気分になってくる。

九時をまわって、外から明るい日が射してきた。上を見ると湯気の中を日光の筋がすっと走っているのが見える。明るい時間の銭湯はこれだからやめられない。いい気分のまま湯舟に浸かることにしよう。湯温はそれほど高くないのだろうが、体が冷えていて熱く感じる。肩まで浸かると手と足の先がとくにじんじん熱い。体のどの部分が冷えているのかがよくわかる。

二度ほど出たり入ったりしただろうか。だいぶ体も温まってきた。お父さんと一緒に来た子どもが、ちょっと水でうめながらもがんばって肩まで浸かっていた。他のお客さんに応援されていたりして、なかなかほほえましい光景である。

隣の金春湯とほぼ同時期になくなってしまうこの銭湯。このあたりの人はこれからどこの銭湯に行くことになるのだろう。内風呂が増えたとはいえ、近くに銭湯が無いことでかなりの不便を強いられる人も多いのだろうなあ。



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