やすの銭湯日記

1997年7月19日
八幡湯

世田谷区北沢3-26-4

人通りの多い土曜日の午後の下北沢、泳ぐように人混みをかき分けてたどり着く銭湯。八幡湯はビルの一階に陣取っている。何ともいい雰囲気の入口で、明治牛乳の宣伝入りのベンチが似合っている。男湯、女湯ではなく殿方、御婦人とあるあたりがいい。

番台に入浴券を渡して中へ。脱衣場はそれほど大きな特徴があるわけでもなく、平凡な感じだ。ビルの銭湯にありがちな脱衣場の真中にどんと立つ柱には四方に鏡がついているが、それだってとくに珍しいものではない。実はここの銭湯、浴室のほうにこだわりがあるようだ。

浴室に入って最初に気づくのは湯舟の位置だ。最近はやりのコミュニティ銭湯の類を除くと、昔ながらの多くの銭湯では入り口の反対側、つまり正面に湯舟が並んでいる。しかし、ここは向かって左側に湯舟がある。何でもないことのようだが、浴室の雰囲気はずいぶん変わる。

さらに注目したいのはカランである。湯舟が左にあるおかげで空いた正面の壁にもカランが並んでいる。その上、手前の脱衣場側の壁にもカランが。それだけではない。通常、カランは水が出る蛇口と湯が出る蛇口の二つで一組になっているが、向かって右手のカランは通常の一組のカランとカランの間にお湯の蛇口だけがぽつんとついている。混みいったときに使うのだろうか、それにしてはずいぶん使いにくそうな気がするぞ。カランを押したときの感触が妙に軟らかいのも気になるし。

カランが多い割にはシャワーの数が少ないのもここの銭湯の特徴と言えるかもしれない。湯舟のほうも泡が出る部分がいかにも後からつけましたと言わんばかりのパイプ丸出しのものだったり、深いほうの湯舟が中腰になって肩まで浸かれるような妙な深さだったりと、変わった部分が多い。にもかかわらず、なんとなく落ち着いていい雰囲気を出している。ちょっと面白い銭湯だ。

あ、そろそろあがらないと宴会の待ち合わせに遅れそうだ。



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