やすの銭湯日記

1998年4月17日
藤の湯

中野区上高田1-8-13

夜になると人の気配がまったくなくなってしまう住宅街。その中にひっそりと建っている銭湯、藤の湯。建つ場所は地味なのだが、入り口部分と隣のコインランドリーが全体的に黄色く塗ってあって非常に派手である。

中に入ってフロントでお金を払う。男湯の暖簾をくぐって引き戸を開けると脱衣場だ。サッシの引き戸の感じといい、なんとなく無機質な雰囲気のある室内。まるでプールの更衣室のようだ。どうしてそういう雰囲気なのかはわからないが、とにかく普通の銭湯での感じ方とは違うような気がする。照明のせいか、それとも客が少ないせいだろうか。

浴室に入ると、たいていの人はこの特徴的な湯舟の背景画を見て驚くに違いない。砂浜の風景なのだが、なんとドラえもんとおばけのQ太郎など藤子不二雄のキャラクタが描いてあるのだ。ちょっと本物と違うような気がするので、おそらく誰かが真似て描いたのだろう。著作権の問題をクリアしているのかどうかはわからないが、とりあえず子供たちは喜ぶに違いない。

背景画だけでなく、浴室内のカランのレイアウトにも特徴がある。比較的幅の広い浴室なのだが中央に一つ仕切りがあるだけで、カランに向かって座ったときに背中のほうに妙に開放感があるのだ。頭を洗ったりしたときに後ろに湯がはねることなどほとんど心配しなくてもいいくらい余裕がある。普通なら仕切りを二つにしてもっとたくさんカランをつけるのだろうが、使うほうの立場としてはこの広さは魅力的だ。

すっかり温まって脱衣場に戻る。ああ、それにしてもこの無機的な雰囲気はなんなのだろう。どなたか訪れる機会があったら原因を究明してください。



yasunori@kimuralab.org