やすの銭湯日記

2001年12月30日
金春湯

港区白金1-26-16

今日は銭湯好きの友人たちが集まる入浴会である。急遽開催されたのだが、そのわけは銭湯の廃業情報だった。数こそ少ない港区の銭湯だが、温泉が使われている銭湯もあるこの地域。今日訪れる「金春湯」が来年一月で廃業するという情報が流れたのである。非常に残念だが、これは是非入っておかなければならない。私はまだ訪れたことがないのである。ということで、私も入浴会に参加することにした。

営団地下鉄南北線、白金高輪の駅を降りて地図を見ると、点線に囲まれて再開発地域と書かれている部分がある。よく見ると、金春湯はこの中に含まれているようだ。南北線が開通してこの辺りにも近いうちに大きなビルが建ちはじめるのだろう。仕方がないこととはいえ、複雑な気分である。

金春湯の場所はすぐにわかった。立派な煙突が目印になっているおかげである。建物も非常に立派な破風造で、いかにも東京の銭湯という堂々とした構えだ。

入口で写真を撮っている人がいるので近づいてみると、やはり思った通り、同じ趣味を持った知り合いの人であった。番台で四百円払って中に入ると、すでに何人か知り合いが来ているようだ。壁際に並ぶのは木製のロッカー、鍵の部分は新しいが、箱の部分はけっこう古そうだ。最近のものと違って一つ一つがかなり広いのがうれしい。この時期の厚着の服もすっぽり収まってしまう。

浴室入口上方には大入額。ガラス戸を開けて浴室正面に見える富士山のペンキ絵は、まさに正統派の東京銭湯という感じがして非常にいい。そして、前述の通り、お湯は茶色の温泉である。

湯舟に浸かる前にまずは体を洗おうとカランに手をかけると、なんとここから出てくるのも茶色い湯。水の方を押してみてもやはり茶色い。もしかしてと思ってシャワーをひねってみたら‥‥期待通り、こちらも温泉の湯である。これはすごい。しかもこの湯は軟水のように石鹸の泡立ちがよく、つるつるした感じがする。入浴にもってこいのすばらしい湯である。

建物などの風情もさることながら、湯のよさだけをとっても訪れる価値がある銭湯、これが廃業してしまうなんて本当にもったいない。貼り紙には一月十五日をもって廃業とある。

廃業したらこの温泉は何か別の用途にあてるのだろうか。ああ、それにしてもここは本当に惜しい銭湯だ。



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